 

整形外科部長 有薗 剛
A.診断について
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「生涯を通じて腰痛を経験しない人はほとんどいない。」と言われるほど腰痛はありふれた訴えであり、二本足歩行を行う人間の宿命とさえ言われています。その原因は様々ですが、成人の腰痛の約80%が器質的変化と結びつかない腰痛、つまり自然に治る状態であるとされています。これまでの調査によれば70%が3週以内に、6〜12週では90%が自然に治るとされています。しかし、中には早期に専門的治療が必要な症例も少なくありません。「腰が痛いのは年のせいだ。」と思っていたら実は癌が腰に転移していたという事もあります。癌の転移については、1994年に発表された有名な論文に以下の項目が当てはまる場合には癌である可能性が極めて高いと報告されています。心当たりの方は必ず病院で診察を受けましょう。
1.50歳以上
2.癌の治療をしたことがある。
3.原因不明の体重減少
4.1ヶ月治療しても軽くならない痛み
5.安静臥床していても軽くならない痛み
6.1ヶ月以上続いている痛み
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B.治療について
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以前は腰痛の治療は「安静が第一」と言われていましたが、最近ではそれは誤りであるという報告が数多く出されています。米国の急性腰痛症治療ガイドラインでも「安静は筋萎縮につながることより治療としての有効性はない。」と明記されています。現在では痛みを我慢できる範囲内で日常生活を続けたほうが良いというのが一般的です。また、腰椎装具(コルセット)に多大な期待をかけておられる方を外来でよくお見かけしますが、コルセット自体の運動抑制力は極めて低く、むしろ腰の周りの筋肉の萎縮を起こしてしまうために、特に長期の使用は弊害の方が大きいとされています。このように治療一つを取ってもいろいろと落とし穴が隠されており、自分だけの判断や近所で聞いてきた話を頼りに治療をしてしまうのは危険です。 |
C.手術について
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腰痛を起こす病気の中には外科的な治療を必要とするものが、いくつかありますが、その代表的な疾患が腰椎々間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症です。腰椎々間板ヘルニアとは骨と骨の間にある椎間板という軟骨が後にでてきて神経を押さえる状態で、下肢に痛みやしびれを生じます。図は腰椎々間板ヘルニアの模型図とMRIですが、ヘルニアによっては神経が圧迫されているのがわかります。また腰部脊柱管狭窄症は、加齢とともにでてきた椎間板や厚くなった靭帯のために神経がはいっているスペースが狭くなって症状を出す状態で、しばらく歩くと下肢の痛みやしびれがひどくなることが特徴です。これらの圧迫の原因となっているものを取り除き、神経症状を和らげるのが手術の目的です。最近は、身体に対する負担を出来るだけ少なくして手術を行うためのいろいろな工夫がなされており、脊椎手術でも内視鏡を用いた手術が行われています。たとえば椎間板ヘルニアの手術では、以前は皮膚を10cm近く切って骨を大きく露出させて手術を行っていましたが、最近では2cm弱の切開で内視鏡を入れて全ての操作を行います。そのため、術後の痛みが少なく、患者さんにはとても好評です。当院でも積極的に内視鏡による手術を行っています。時折、腰の手術をすると下半身不随になると心配される方がいらっしゃいますが、それは誤りです。腰にある神経は筋肉支配のパターンが決まっており、足の全てが動かなくなることはありません。手術は誰にとっても怖いものですが、最終的に手術を受けるかどうかを決めるのは患者さん御自身であり、我々が強制することは決してありません。怖がらずにまず病院で受診してよく相談され、状態に応じた適切な治療を受けることが何よりも大事です。腰や足の痛み、シビレでお悩みの方は是非専門的診察を受けて下さい。 |

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