| 超音波検査の普及により、早期に肝腫瘍が発見される機会が増えました。肝腫瘍は組織学的に血管腫や嚢胞などの良性腫瘍と、肝細胞癌に代表される悪性腫瘍に大別されます。ここでは臨床的に問題になっている肝細胞癌の臨床像についてお話いたします。
T.肝細胞癌の特徴
肝細胞癌は殆どの症例が肝硬変を基礎に発生し、多くは再発を繰り返します。ほかの悪性腫瘍とは異なる特徴です。肝硬変の患者さんでは肝予備能が低下していることが多く、内科的治療が重要です。また、2cm以下の小さな肝細胞癌を経皮的エタノール注入療法(PEIT)や外科的切除で完治しても、多くの場合は別の場所に新たな癌が発生します。そこで肝細胞癌の治療には、他の悪性腫瘍に比べて内科の役割が大きいのです。我が国では、肝細胞癌症例のおよそ90%は肝炎ウイルス陽性です。そのうちB型肝炎ウイルスは10%程度ですが、C型肝炎ウイルスの抗体陽性者は80%を占めます。特に活動性が高いC型肝炎症例において、肝硬変から肝細胞癌に進展することが多いようです。
U.ウイルス性肝炎から肝細胞癌へ

B型肝炎ウイルス(HBV)の感染として、新生児期に母児間感染した場合には無症候性キャリアとなり、一部が慢性肝炎、肝硬変から肝細胞癌に進展します。成人になってからHBVに感染した場合は、不顕性感染となるかB型急性肝炎となり、肝硬変へ進展することはまれです。但し、B型肝炎では肝硬変だけでなく、無症候性キャリアや慢性肝炎からも肝細胞癌が発生します。一方、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、輸血や刺青などの血液を介して起きます。感染した場合は急性肝炎を発症し、70%以上と高率に慢性肝炎から肝硬変へと進展します。さらに、肝炎の活動性の高い症例では、平均25年の経過で肝硬変から肝細胞癌が発生します。C型肝炎でみられる肝細胞癌は、多くが肝硬変症に進展した症例です。
V.肝細胞癌の診断と治療
慢性肝障害をもつ患者さんでは、いつ発生してくるかわからない肝細胞癌をできるだけ小さな段階で発見する必要があります。肝細胞癌を約2cm以下の大きさで発見するために、C型肝炎症例では2〜3ヶ月に1度の腹部超音波検査と腫瘍マーカー検査、年1回の腹部CT検査が必要です。HBV感染者の場合は無症候性キャリアの状態でも、年2回程度は腹部超音波検査を行なうことが必要だといわれています。治療法としては、@経皮的エタノール注入療法(PEIT)、マイクロウエーブ凝固療法(PMCT)、A経カテーテル肝動脈塞栓療法(TAE)、B肝動注化学療法(TAI)、C外科的切除があります。このうちPEIT・PMCTは、肝機能の悪い症例でも安全、確実に繰り返し施行できる点で、最も有効な治療法です。またC型肝炎ウイルスと発癌の関連性から、インターフェロン療法によりウイルスを排除することで、癌発生の予防効果が期待されています。
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